00/朝の風景・前
朝。
学校。
廊下。
この三つの条件がそろっているのなら、そこで発生する出来事もすでに決まったも同然だ。
まだ人通りの少ない板張りの廊下にて、前方約25メートルの位置に、秋葉は探していた姿を見つけ、口元を歪ませた。
あの童顔。あの貧弱な身体。あのおよそ女性らしさを感じられないたち振る舞い。間違いない。
視線の先の少女は確かに可愛い。しかし彼女に対する、その「可愛い」という評価の30%ほどは「虐めたらキャンキャン泣いてくれそうで」という前置きが省略されている姿だろう。
むろん、秋葉もその一人であった。
「あら。奇遇ね」
「っ!?」
ビクリッ、突然現れた人間に驚く小動物のような仕草で跳ね上がる少女……瀬尾晶。
その顔には馬鹿正直なまでにまったく隠されることなく、「しまったぁっ」という感情が表れている。まったく。嗜虐心を刺激してやまない、少女だった。
だが、秋葉はそのことには気づかぬふりをした。
「せっかく、一緒に登校しようと思ってましたのに、勝手にひとりで行ってしまうのだから……つれないですわね?」
「あわっあわわぁっあわわっあわっ……」
クスクスとからかうように笑いながら、頭を少し下げて晶の耳元へ口を近づける秋葉。
その姿は一見、秘密事を語る少女達の淡い情景にも見えうるかもしれないが、また、見方を変えれば少女の頬へと接吻をしている姿のようにも見え、どことなく淫猥な雰囲気にもとれる。
その事を知ってか知らずか、晶は怯えたように顔を真っ青にしたかと思ったら、恥ずかしげに頬を乙女の薄紅色へと変え、そしてまた真っ青へ……そんな繰り返しを続けている。
秋葉は嗤った。コロコロと転がるダイスの目のように表情を変えていく晶に。その、可愛らしさに。
しかし、同様にきえない不思議な怒りも感じていた。
この表情こそを。
秋葉にはできないこのおかしくて、かわいらしいこの表情こそを、彼女の最愛の人は求めたのだから。
「下校は、ご一緒したいですわね。お義姉様」
全ての始まりは、三週間前。
兄嫁は下級生!? 〜The family game〜
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