注:この作品を読む前に、まず『まとまりに欠けるプロローグ』をお読みになってください。





ごった煮SS・とりとめのないストーリー
『まとまりに欠けるプロローグ』...補足(あるいは蛇足)






 
 The AFTER


 山から下りてきた梓は、その足で夕食の材料を買うために商店街に向かった。

「おっちゃん、牛すき焼き用700グラムね」

「おっ、梓ちゃん。今日は豪勢だねぇ」

「ああ。おっきいのが一人居るからね」

 基本的に、柏木家は魚食が多い。また、たまに牛肉なんかを買っていくときもその量は四人家族としてはやや少ないものだった。

 四女の初音はこちらが心配するほど小食だし、三女の楓も早食いはお手の物だが大食いというわけではない。

 長女の千鶴は・・・食べたくても食べれない事情が有るようだ。

 梓自身も部活をしていた頃は馬鹿食いすることもあったが、引退してからはそんな大量に食べることはない。

 そんなわけで、四人だけならば700も買う必要はないのだが・・・

「あ、そうだったね。耕一君が帰ってるんだったね」

「そうなんだよ。ったく、あんなに食いやがって・・・あいつのせいでウチの家計がひどいことになっちまう!」

「あはは。だったら、ウチの家計が助かるのは耕一君のおかげってわけだ!」

 そんな冗談を交わし会えるのもこういった地元の店ならではのものだ。

 最近はここ隆山にもスーパーができ、客を多く集めている。

 だが、やはり梓はこの全体的に人の良い雰囲気の商店街が気に入っていた。

「あいよ」

「ん、ありがと。はい、お金ね」

「まいど〜。また来てね〜」

 肉の入った袋を受け取り、軽く手を振って店を離れる。

 700グラムの肉は、普段の買い物では感じられない、すこしだけずっしりとしていた。

(この重さが、あいつが居るぶんの重さなんだな)

 意識せず、梓の顔にほほえみが灯った。

 なんだが、意味もなく嬉しかった。

 嬉しく思えることが、嬉しかった。

 自分がいかに情緒不安定であるかはよく分かっている。

 他人だけでなく、家族にさえどこか疎外感を感じている自分・・・。

 不安定に揺れ動くココロ。

 嬉しいのに怖くて、寂しいのに触れられなくて、じっと見つめていたいのに目をそらしてしまって・・・

 なのに・・・

 不思議とこの重さを持っている間だけは心が安定してくれた。

 あいつがそばにいる。

 そう、強く意識できる瞬間。

(あたしも・・・やり方がスマートじゃないな。自分でも不器用で、およそ合理的という言葉からかけ離れてて、かなり間抜けで、馬鹿としか言いようがないって思うよ)

 でも・・・

 それでも良いんじゃない?

 あの自称吸血鬼の女の子もそうだった。

 ヘタクソだけど、馬鹿みたいに一直線に・・・実際には蛇行のしっぱなしだったけど・・・走ってる。

 他人から観たら笑い話だろうけど・・・

 あたしはあたしなりにがんばるよ。

「へへっ」

 ふと、ある言葉が頭に浮かび・・・思わず、口に出して笑ってしまった。 

 いつの間にか、家の門が視界に入っていた。

「さて・・・じゃ、「餌付け」といきますか!」

 そういって、梓は我が家へ向けて駆け出していた。



「ただいまっ!!」





..... and OVER



「お帰り〜」

「お帰りなさい〜」

「へ?」

 居間から聞こえてくる聞きたかった声と、聞き慣れない声。

 しかも、あろうことか女の声だ。

「耕一ぃ、人が来てるの?」

 客人なら・・・この時間なら夕食を食べていくかも・・・

 等と考えていると、トコトコと居間の方から足音が聞こえてきた。

「おう、梓。紹介するわ。ついさっき知り合いになった・・・」

「弓塚さつきです・・・って!!」

「あああああああああっ!!」

「あなたはさっきの人じゃない!?」

 思っても見なかった状況に、大口を開けたまま声が出なくなる梓。

 そう、目の前にいたのは、確かにさきほど山で出会った自称吸血鬼のツインテール少女だった。

「なに?知り合いだったのかよ?」

「あ、はい。さっき話した・・・」

「ああ。山で出会った鬼ババアって、こいつのことだったのか!」

「この人、耕一さんとはどういう関係なんですか?」

「ああ、こいつは柏木梓。我が家のメイドだ

「誰がメイドだ、ごらぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「あ、蘇った・・・」

「なんでココにあんたが居るんだ!帰ったんじゃなかったのか!」

「えへへ〜、実は、あのまま帰るために駅まで跳んで行ったんだけど、その途中で耕一さんとばったりであっちゃってぇ」

「おぉ。ビックリしたぜぇ。なんせ、山の中から制服着た女の子が「異質な気配」を振りまきながら跳びだして来るんだから」

 あっはっはと、欠片ほどの緊張感もなく語る耕一。

 ピクピクと額に怒りマークを浮かばせている梓の存在を無視して、二人は話を続けた。

「逃げようと思ったんだけど、捕まっちゃってねぇ」

「最初は敵かと思ったんだけど、見てみたらこんな可愛い女の子だし、敵意は無いみたいだしさぁ」

「や〜、カワイイだなんてぇ♪」

だぁぁぁぁぁぁぁっ!!だからっ!なんであんたが我が家に居るんだっ!!」

「いや、だって・・・聞くところによると、行くところが無いらしいから・・・」

 耕一のその一言。梓はさつきにジト目を向けた。

「・・・おぃ」

「あはは〜(汗」

「あははじゃねぇ。あんた、いく宛があるっていったじゃないか!?」

「えっと・・・だってぇ・・・」

「だって?」

「・・・耕一さんって、結構・・・カッコイイかなって。エヘッ♪」

「でてけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!」

「こらこら、梓。いく宛がないって行ってるんだから・・・ちょっとくらい良いじゃねぇか」

「ありがとうございます、耕一さん♪」

「で・て・けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 自分の置かれている立場も考えず、のほほんとした反応の耕一。

 すでに恋する乙女の瞳をしているさつき。

 天に轟けと渾身の叫びを上げる梓。

 この後、残りの姉妹達も交えて天地を揺るがす大決戦が行われることになるのだが・・・

 それは、また別のお話。



ごった煮SS・とりとめのないストーリー2『協調性に欠ける乙女達』へ続く
(注 たぶん続きません
と思ってたら続きました(笑