『Good Night, Baby...』
コクリ――――
コクリ――――
彼女の細い頤が、不規則に舟を漕ぐ。
クッと溜めては、ガクンと一気に頭が落ちる。
でも地面までは落ちず、また元の位置に戻る。そしてもう一度、同じ事を繰り返す。
まるで鹿威し(ししおどし)みたいだ。
「式……眠いの?」
「ネムクナイ……」
答えた自分の声で、目を覚ましたような、そんな気の無い声だった。
それが事実であるか、分からないが……
少なくとも彼女の慌てっぷりは、信憑性を強めていただろう。
彼女は慌てて居住まいを正すと、彼を睨み付けた。
「眠くない」
「それは、もう聞いたよ」
「うるさいな。何度言ったって、良いじゃないか」
「それはそうだけどね……。でも、眠いなら寝たほうが良いよ?」
彼の言葉に、彼女はムッと眉をひそめた。
やはり眠たいのだろう。
瞼が重く下がり、人相が悪くなっている。
「眠くないって言っただろ」
「うん。言ったね。聞いたよ」
「だから、眠くないんだ」
「……わかったよ」
苦笑する彼に、彼女は更に不満げな顔をした。
だが、追求しても仕方が無い。そう諦めたようだった。
先ほどから流れている映画は、いい加減ラストに近づいてきたようで、主人公の男女が抱きしめあっている。
内容は良く分からない。
周りは暗く、人気なんてほとんど無い。
遠くで、カップルらしい男女が、映画に感化されたのか身体を寄せ合っていた。
随分とお手軽な感受性じゃないか。
彼は苦笑する。だけど、羨ましさがまったく無いわけでは……ない。
コクリ――――
コクリ――――
気づくと、彼の隣で、また彼女が舟を漕ぎ始めていた。
なんだい。随分と、色気の無い話じゃないか。
この暗闇の中では……むしろこちらの方が似合ってるのかもしれないけれど。
遠くのカップルは、さらに盛り上がってきたようで、キスでもしているようだ。
「式……眠いの?」
「う……? ん……」
帰ってきた返答は、もう返答ですらなかった。
曖昧な声。不明瞭な意志。
でも、それが答えでもあった。
「……寝て良いよ。式」
「…………ぅん」
ぽてん、と……彼女の頭が、彼の肩に乗る。
暗いその世界で、二人の影が、一つになった。
それで、揺れていた頤は、動かなくなった。
呼吸が深く、不規則になっていく。
「おやすみ、式」
あとがき
本家第四回人気投票、式支援SS〜♪
突発的に書いただけあって、何が書きたいのやらさっぱりですね(汗
唐突に終わってるし……。
とりあえず、眠たそうにしてる式、を書けたのは嬉しいですけど♪
結果発表が楽しみだな〜♪
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