不幸なんてモノは、いつだって予想だにできない意外なことから展開してくるモノだ。

「花見?」

 なんてことない、本当になんてことない些細なところから・・・。

「ああ。いいなぁ」

 なんであんな返事をしてしまったのだろう・・・。

「みんなを誘ってな」

 今更ながらそんなことを後悔してみたりしても、事態はかわらない。

「花見かぁ。楽しみだなぁ♪」

 ・・・あぁ・・・もし可能なのだとしたら、あの頃に戻りたい。



 もちろん、不可能なんだけどな。




1000HIT記念♪
『桜の木の惨劇』




 ・・・頭上には八部咲きの桜の木々。

 風に舞う薄い桃色の花びら達が一面を幻想的なピンクに染め上げ、あたりに揺らめくほのかな木々の薫りはまるで春の日向の様に優しく、そして暖かい。

 将来、どれだけの時を生きようとも俺はこの風景を忘れないだろう。

 奇跡的なバランスで保たれたこの自然の芸術を・・・けして・・・忘れたりしないだろう。

「ありがとう・・・」

 俺は、誰ともなく・・・そう呟いた。

「あはは〜、祐一しゃん。一人っきりで現実逃避してちゃダメでふにょ〜」

 複数で現実逃避してたら、よけいヤバイですよ。佐祐理さん。

「にゅ・・・」

 寝ながら飲むのは止めろヨ・・・名雪。

「にゃはっはははははははははは」

 ・・・笑い死するなヨ・・・真琴。

「おいしいです・・・」

 一見優雅に飲んでると見せかけて、大ジョッキでチャンポンするのは止めろ。天野。

「にゅういみはにゃ〜」

 ・・・なんていってるんだ?栞。

「そうそう相沢くぅん〜飲んでるぅぅゥ?」

 飲んでる・・・飲んでるからいちいちからんで来るな。香里・・・。

「うまうま・・・」

 ・・・食ってばっかだな・・・舞。

「うぐぅうぐぅうぐぅ」

 黙れ(爆

「あらあら・・・」

 見てないで助けてくださいよ、秋子さん。



 この状況を俺の主観的に表現するなれば・・・ずばり、「助けて」だろう・・・。

 え?どういう状況なんだって?

 花見だよ・・・そう。花見だ。

 え?花見なのに、なんでこんなにみんな壊れてるかって?

 なんてことない。花見にお酒は当然だろう?(法律なんて関係ねえッ!)

 最初は・・・みんなチョビっとずつだったんだ。香里や天野なんかは、嫌がってぜんぜん飲もうとしなかったさ。

 だが・・・



「あらあら。お酒が飲めないんじゃあ、立派なお嫁さんになれませんよ♪」

 なぁんて、秋子さんが訳のわからんことを言ったもんだから・・・

「・・・飲まないわけにはいかないようですね・・・」

「・・・まけられないわ」

 ってな事になったわけだ。



「にゅ〜祐一ぃ〜」

「うわっ!いきなりもたれ掛かってくるなよ、名雪」

「ゆういちぃ、さっきからぜんぜん飲んでないよぉ〜」

「そうよ〜相沢君〜飲みなさい〜」

「わ、香里・・・酒くさいぞ・・・」

「なに〜?あたしの酒が飲めないっての〜」

 うぅ・・・カラミ酒・・・

 誰か〜助けてくれぇェ〜

「あはは〜、美坂(姉)さん〜、佐祐理の祐一さんにあんまり近づかないでくださいね〜」

「ブハッ!(吐」

「・・・なにか言いましたか?倉田先輩・・・」

「あはは〜耳が悪いですネェ。その汚い顔を『佐祐理の』祐一さんから放してくださいって言ったんですよ〜」

 な・・・いきなり何を言うんですか、佐祐理さん!

「聞き捨てなりませんね・・・」

「・・・同じく」

 あ・・・あれ?なんなんだ・・・この妙な空気は・・・

「にゃはははははははははははは、ゆういちぃは真琴のものだも〜ん」

「しょんなこといふ人は〜きにゃいでひゅ〜」

 まさか・・・まさか・・・そういう展開なのですか?


『祐一は私のものだよ!』(全員)


 うがあぁァァァァァ!やっぱりそう来たかぁァァァァッ!!!

 ヤバい・・・みんな酒が回って理性を無くしかけてる・・・。

 この状態での争奪戦は血が流れるぞ・・・。

「あ、秋子さん!ヘルプミー!!!」

「あらあら、困りましたねぇ。じゃあ、こんなのはどうです?花見といえば宴。宴といえば楽しい。楽しいといえばお笑い。お笑いといえばダチョウ倶楽部。ダチョウ倶楽部といえば一発芸。と、いうわけで・・・」


『第1回!相沢祐一争奪一発芸大会!!』


「・・・なんですか?そりは・・・」

「皆さんがそれぞれ一発芸を披露し、その中で一番祐一さんが気に入った一発芸をした人に、祐一さんをプレゼントするんです」

「んなむちゃくちゃな・・・」

「・・・いいよ」

「へ?」

「一発芸でもなんでも、祐一のためならえんやこらだよ!」

「同感ね。みんなも、良いわね?勝った人が相沢君の占有権を得るのよ。もちろん、恨みっこ無し」

 全員が一様に頷く。

 桜の花びらが舞い踊るこの場所で、少女達が瞳に闘志をたぎらせてにらみ合うその姿は、かなりいい感じにシュールな風景だった・・・

 が、残念なことにツッコム者は誰も居なかった。

 もちろん、俺もツッコマない。ツッコンでも無駄だと、本能が告げている。

 俺的には・・・なんというか・・・もう、どーにでもなれって感じだ(涙

「えぇ〜い!こうならヤケだ!!」

「あらあら、祐一さん・・・それはウイスキーですよ。そんなイッキ飲みしちゃぁ・・・」

 ごきゅ、ごきゅ、ごきゅ・・・

「・・・ふ・・・ふふふ」

「あら?」

「ふはははははははははは!いいじゃねぇか!貴様らの一発芸見せてみやがれぇっ!」

「あらあら・・・酔った祐一さんってばとってもワイルド♪」

 秋子さんのなぜか嬉しげな声を背に、俺は八人の挑戦者達に厳しい視線を向けた。



「一番!水瀬名雪!逆立ちしながら寝ます!!

「却下だ!」

 即答。

「えぇ〜どうして〜?」

「当たり前だ!お前のそれは芸じゃねぇ!普段やってる事じゃねぇか!」

「そんな〜」

「バカヤロウ!!芸の道をなめるなよ!!」

「そのとぉぉぉり!ゲイの道は細く長く、険しいもの!生半可な心ではその入り口すら通ることはできん!!」

「おぉっ!おぬし、芸の何たるかを知っているな!」

「フフフ・・・当たり前だ兄弟!とうっ!」

 掛け声とともに、頭上の木の上から人が飛び降りてきた。

 その人物とは・・・

「二番手!北川潤!!」

「男はいらんわっ!」

 ごすっ!

「次ぃ!」

「三番!月宮あゆ!食い逃げ・・・」

却下ッ!理由は名雪と同じ!」

「フフフ・・・甘いよ、祐一君」

「なに?」

「食い逃げは食い逃げでも、ただの食い逃げじゃないんだヨ・・・」

「ほぉ?聞こうじゃないか」

「食い逃げは食い逃げでも・・・マ○ド○ルドで・・・」

「できるかぁっ!」

「う、うぐぅ?」

「あそこは先払いだ!先払いの店で食い逃げができるかッ!!」

「うぐぅ〜」

「あいかわらず詰めの甘いバカうぐぅだなぁ!どうせやるなら、『スマイル・・・・・Lサイズでぐらいやりやがれッ!!」

「うぐぅ〜スマイルのLサイズってなに?」

「知るかッ!!」(爆

「四番!美坂栞!幽体離脱します!!」

「却下!」

「どうしてですか!?」

取り返しのつかないことになる!!」

「五番!美坂香里!オラオラしますっ!」

「オラオラ?」

「ここに見えますはなんの変哲もない北川潤」

「うむ。首が変な方向に曲がっているが、たしかになんの変哲もない北川潤だ!」

「それをちょいと空中へ放り投げ・・・落ちてきたところを・・・オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ」

 ごす、ばす、めき

「・・・・・」

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ」

 ばき、ぐき、めきゃ

「・・・・・」

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ」

 みゃきゅ、ぐちょ、にちゃ

「・・・なんか水っぽい音がしてきたので・・・次っ!!」

「あはは〜六番!倉田佐祐理、変身します♪」

「変身?」

テクマクマヤコン、テクマクマヤコン・・・猫さんになぁ〜れ!」

「おぉ!なんか怪しげな、そしてどこか懐かしげな呪文!!」

「あはは〜猫さんですよ〜♪にゃ〜ん♪ごろごろ〜♪」

「・・・・・」

「・・・あれれ?おかしいですね〜。殿方はみんなこういうのに弱いと聞いていたんですが・・・」

「いや・・・たしかに弱いんだが・・・」

「え?」

「・・・ね〜こ〜(じゅるり☆」

「ひっ!」

「ねこ〜!!!!」

「きゃあああああっ!」

「次・・・(だんだん酔いが冷めてきた」

「七番・・・川澄舞。人体切断マジック・・・。」

「・・・・・」

「・・・ここに見えますは、なんの変哲もない北川潤・・・らしきもの・・・

「・・・どうしてもというのなら、向こうでやってくれ・・・」

「・・・はちみつくまさん」

 ずるずるずるずる・・・

「・・・次・・・」

「八番・・・にゃははは〜沢渡真琴〜!アンド!!」

「・・・天野美汐(涙」

「ここに取り出したるは、赤いダンボールと緑のダンボール!!それらを装着ッ!!すると・・・」

「・・・まさか・・・」

「赤のきつねッ!」

「・・・えぐっ・・・緑のたぬき」(爆

 ビュゥゥゥ〜〜〜〜(寒

「・・・天野・・・身体を張ったな」

「・・・こんな酷なことは・・・(涙」

「分かった!!分かったから本気で泣きそうな声を出すなっ!痛々し過ぎるわっ!!(汗」



 ・・・はァ・・・疲れた・・・。

 酔いももうすっかり冷めてしまっている・・・。

 だが・・・。

「・・・これで・・・全員おわったな・・・」

 後は、誰が一番よかったか選ぶだけか・・・。って、それが一番辛い・・・。

「いいえ、祐一さん。まだ私が残ってますよ♪」

「え?あ、秋子さんも?」

「あら、ダメですか?」

「だめっていうか・・・」

 俺は、名雪にお父さんと呼ばれるような関係にはなりたくないぞ・・・。

「問題ないですよ。私はそのルールから外してくれて構いませんから♪」

「・・・なんか・・・ヤケにやりたそうですね・・・」

「皆さんのを見てたら、急に私もやりたくなったんですよ♪かまいませんよね?」

(なんか・・・ひたすら怪しい・・・)

 表情はまったく普段とかわらないが、口調がすでにやる気満々だ(汗

 ・・・・・・・・・・ハッ!

 ま、まさか・・・

「まさか・・・秋子さん・・・」

「ニヤソ」

(や、やっぱりィィィ〜)

 やられた!まさかこの「第一回相沢祐一争奪一発芸大会」はすべて、この秋子さん自身がネタを披露するための『フリ』だったとわ!

「まさか、こんな長い『フリ』を使ってくるとは・・・予想もしてませんでしたよ(汗」

「ふふふ。今更気づいても、逃げられませんヨ♪まだ「第一回相沢祐一争奪一発芸大会」は終わってないんです。勝者が出ていないこの状況で、あの子達が見逃してくれると思いますか?」

 それを肯定するかのように、『逃げたら殺すでぇ』といわんばかりの視線を向けてくる名雪たち・・・。

(ぬぅ・・・祐一ちん、ぴぃ〜んち!)

 自らの目的のために周りの人間の心理を利用し、逃れられない状況を作り出す・・・。

 おのれぇ・・・恐るべし!策士秋子!!

「さぁ祐一さん。イイ感じに私の一発芸の餌食になってくださいね♪」

「え、餌食ってなんですか!餌食って!?」

「言葉どおりですヨ♪」

「だぁぁぁっ!だいたい、これは一発芸大会でしょ!?」

「一発芸・・・そうですね。たしかに・・・一発です(ニヤソ」

「なにがだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」

 あぁ・・・誰でもいいから、ヘルプミィ・・・。

「大丈夫。痛くないですからね♪」

 薄れ行く意識の中・・・俺が最後に見たもの。

 それは、秋子さんの・・・昔病院で見たすげぇ痛い注射をする時の看護婦さんに似た偽善チックな微笑だった。










暗転






あとがき。というか言い訳。

ぴろりさん、1000HIT踏み踏みおめでとうございます♪
記念にSSを送らせていただきました。
ギャグSSがお好みだった様なので、こんなのにして見ましたが・・・すみません。笑えないかもしれないです。
いや・・・秋子さんをオチに持ってきたはいいものの、秋子さんの一発芸っていうのが思いつかなくて・・・。
結果的に、まったくオチてません(涙
うぅ・・・いちおう、雨音的には全力を注いだつもりですが、ネタを成熟させるだけの時間が無かったので、この程度のものになってしまいました。
勘弁してください(平謝り

でわ、これからもどうぞよろしくお願いします〜


01/03/24   write by AMANE