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はぁれむ・ばすけっと♪
第二話





 目覚めはあまり良い方ではない。

 だが、今日は少し違った。

「寒い・・・」

 すげぇ寒い。びっくりするほど寒い。

 夏は暑いモノで冬は寒いモノ。

 これは日本において当たり前のことではあったが・・・それにしても寒い。

 今まで経験したことのない寒さだった。

(そうか・・・俺はあの街に来てたんだったな・・・)

 幼い頃なんども訪れていた雪国。

 今俺は、その場所に帰ってきていたんだ・・・。

(・・・昔とは・・・だいぶ変わってるな・・・)

 実際には何も変わっていない。ただ俺の目線が変わっただけなのだろう。

 しかし、それにしても・・・やはりこの街は『変わった』というしかなかった。

(とくにあいつらだ!)

 7年前わかれたっきりのいとこ。

 かつての友人。 

(・・・夢じゃない・・・だけど夢みたいな話だよなぁ・・・)

 おもわず、ため息が出た。



 あの後。



 俺はしばらく硬直していたが、なんとかその状態から抜け出すことに成功した。

「で、で、でも!7年前は・・・」

 名雪はともかく、あゆには何度かぶつかられた経験がある。

「この性質は思春期・・・つまり二次成長がおこる時期から現れるらしいよ」

「そんな・・・」

「驚くのは無理ないと思うけど・・・ホントのことなんだよ」

「そうだよ。祐一君」

 二人の真剣な瞳が向けられる。

「・・・わかった・・・信じるよ」

 信じがたい事ではあるが、目の前にその証拠が存在しているのなら信じざるを得まい。

 それに・・・

「可愛いしな、それ・・・」

「え?」

「うぐぅ?」

 猫の耳と猫のしっぽ。

 ネズミの耳とネズミのしっぽ。

 それらは愛嬌があって・・・驚きの後に残っているのは可愛らしさだけだった。

「うぐぅ・・・恥ずかしいよぉ」

 恥ずかしそうに染まった頬を隠すようにうつむくあゆ。しかしその心情を耳としっぽが如実に表現していた。

(これは・・・結構おもしろいな)

「ほら、あゆ・・・隠すなよ」

「うぐぅぅ(///

「ほらほらぁ、こんな可愛いのに」

「うぐぅぅぅ(///

 俺の言葉に敏感に反応し、茹で蛸のように真っ赤になるあゆ。

 耳と尻尾からは力が抜けて、「へにゃぁ」と垂れ下がっている。

「ほらほらほらぁ、もっとよく見せてくれよ(ハァハァ」

「そ、そんなぁ」

「いいかげんにせんねっ!」

 ごんっ

「ソノ辺ニシテ早ク家ニ帰リマセンカ?」

「・・・うぃ」

 握り拳をちらつかせながらリアルに殺意がこもった視線を向けられれば、断るわけにもいかない。

「じゃ、じゃあな、あゆ。俺は名雪の家に行くから・・・」

「うん。知ってるよ」

「そうか。じゃあ、また今度遊びに来いよ」

 俺の家じゃないけど・・・と付け加えておく。

 まぁ、名雪とあゆは知り合いみたいだし、問題ないだろう。

 ・・・しかし・・・あゆから帰ってきたのは不思議そうな声だった。

「・・・祐一君は・・・知らないの?」

「なにがだ?」

「あっ、まだ言ってなかったね。実は、あゆちゃんは今家にすんでるんだよ」

「へ?なんで?」

 あゆにだって家族があるはずなのに・・・

 だが、なにか質問が悪かったのか・・・名雪とあゆは少しだけ気まずそうに顔を背けた。

「・・・ほら、私たちってこういう体質でしょ?だから、一般の家庭では暮らしにくいんだよ・・・」

「あ・・・」

 確かに。俺は意外に簡単に受け止められたが、普通に考えたらこの状況は「異常」だ。

 自分の産んだ子供が動物の妖怪の姿へと変化する光景を見て、それを受け止められるだろうか?

 心の強い人なら・・・何とかなるかもしれない。だが、みんながみんな強い訳じゃない。

 大人になっても、親になっても、心の弱い人間というのは確かに存在している。

 他の人なら笑って通り過ごせる事も、中には耐えられない苦しみだという人もいる。

 誰が悪かった訳じゃない。

 ・・・ただ、運が悪かっただけなのだ・・・。

「あゆ・・・」

「あっ・・・」

 俺はなんとなく・・・あゆの頭に手をおいて、グシグシと撫でていた。

 とくに理由があったわけでもない。

 そうしたい・・・そう思ったから。

 抱きしめたいとも思ったが、それは・・・同情になってしまいそうで・・・。

「ゆ、祐一君・・・くすぐったいよぉ」
 
 あゆはそういいながらも、どこか嬉しそうな表情だった。

「・・・さっ、帰るかっ!」

「ウン!」

「そうだね」

 三人並んで家路を歩く。

 それは、いままで感じたことのない不思議な・・・。




「はぁ・・・」

 長い回想から帰ってきて・・・俺は再びため息をついた。

 変わってしまった。

 世界が・・・。

 そして俺の心が・・・。

 でも・・・

「・・・まぁ、これはこれで楽しい、かな・・・?」

 俺は寒さに震えながら布団から抜け出し、カーテンを引く。

 窓の外は一面の・・・白。 

「これは・・・変わってないなぁ・・・」

 今まで住んでいたところでは見ることの無かった銀世界。

 子供の頃はこの風景に心躍ったことだが、今となっては「歩くの大変そうだなぁ」程度にしか思わない。

 ココから学校までは近いのだろうか?

 遠かったら毎朝大変そうだ。

「うぐぅぅぅ〜!寝坊しちゃったよ〜!!」

 ドタバタドタバタ

「・・・・・」

「うぐぅぅぅ、制服はどこ〜!」

 ドタバタドタバタ

「・・・・・」

「うぐぅぅぅぅぅっ!名雪ちゃん、早く起きてよぉ〜!」

 ドタバタドタバタ

「・・・はぁ」

 どうやら、近くても毎朝大変そうだ。

 ガチャ

「うるさいなぁ・・・」

「あっ、祐一君。おはようっ」

「馬鹿者!朝はおはッス!!だ!」

 ”おはスタ→目覚ましテレビ(途中から)→朝のこども劇場”が俺の日課だった。

「ってか、朝からどうしてそんな急いでるんだ?」

「そうだよ!急いでるんだよ!どれくらい急いでいるかというと、締め切り二時間前の漫画家くらい急いでるんだよ!」

「あぁ、わかったわかった。要するに鼻血が出そうなほど急いでるってワケだろ?どれくらい急いでるかはよく分かったから、その急いでる理由を教えろ」

「え?・・・えぇっと・・・・・なんだっけ?」

「知るかっ!?」

 ごいんっ

「うぐぅ!祐一君がぶったぁ」

「これで思い出せたんじゃないか?」

「そんな事あるわけないよ!」

 まぁ、たしかにそうそう上手くはいかないものだ。

 しかし・・・今更ながらあゆの姿を眺める。

 淡い桃色のダブダブパジャマ(似合ってない)は色が色だが、ズボンという事もあってあゆの少年っぽさをさらに引き立てている。

「うぐぅ、それってどういう意味だよっ!?」

「胸がないって意味だ」

 人様の思考にツッコミを入れてくる不法侵入者にはとりあえず即答しておく。

 俺はふと、彼女の頭のてっぺんに視線を向けた。

 まだ櫛は通してないのか髪の毛が少し乱れている。しかし寝相は良いほうなようで、ひどいモノではない。

 その髪のうえ・・・には、やはり何もなかった。

 昨日、水瀬家へ帰ってきていったん自室へと戻り、そしてもう一度顔を合わせたときには綺麗さっぱり消えていた。

 どうやら、名雪の言うとおり時間がたてば勝手に消えるらしいが・・・あまりにも綺麗に消えたモンだから、やはり夢なんじゃないかと思ったほどだ。

 しかし・・・もったいないなぁ・・・

「うぐぅ!それもどういう意味なの!!」

「チャームポイントが減ったって事だ」

 再び即答。

 何で人の思考を読むかなぁ・・・ったく。

「あらあら、なかなか降りてこないと思ったら、こんなところでお話ししてたの」

「あ、秋子さん。おはようございます」

「おはようございます♪」

「はい、おはようございます」

 水瀬家の家主にして水瀬名雪の母。水瀬秋子さん・・・あいかわらず綺麗な人だ。

 高校生の子供が居るとは思えない・・・若々しさ。

 昨日会ったときも、七年前の記憶に残っていた顔がそのままでてきたものだから、かなりびっくりしたのを覚えてる。

「ほら、あゆちゃん。そろそろ下に降りて食事をしないと、間に合いませんよ?」

「うぐぅ!そうだよ、急いでるんだよ!」

 いままで忘れていたのか・・・再びあゆがあたふたと暴れ始めた。

 どうでもいいが・・・かなり間抜けなやつだ。

「で・・・あゆあゆ。制服と名雪はどうしたんだ?」

「・・・え?」

「いや、さっきそうさけんでたから・・・何か関係が有るんじゃないか?」

「そ、そうだよ!制服と名雪ちゃん!!」

 俺の助言で、なんとか当初の目的を思い出したのか、どたどたと走っていくあゆ。

「うぐぅ〜制服〜!」

「あゆちゃん、制服は物干しに掛かってますよ」

「うぐぅ〜名雪ちゃん〜!いいかげんに起きてよ〜!」

「・・・はぁ・・・」

「がんばってくださいね」

「・・・努力します」

 この地に生まれ落ちて・・・おそらく初めてだろう。

 朝っぱらからこんなにつかれたのは・・・。

 俺の隣の部屋・・・おそらく名雪の部屋なのだろう・・・から聞こえてくるあゆの泣き声と名雪と思われるうめき声。

「あいつらは、いったい何をしてるんだ・・・」

 ため息混じりにつぶやきながら・・・俺はその部屋へと足を踏み出していた。

 まったく・・・面倒くさい。

 でも・・・

 退屈しそうにはないな。


 

 なんとなくにやけそうになる顔を無理矢理押さえつける。

 今は・・・それで十分だから・・・。

 今・・・は。






あとがき

どうも〜、フルーツバスケットのTVアニメを見逃してちょっとブルーな雨音です♪
はぁれむ・ばすけっと第二話が完成しましたぁ。
やたら時間が掛かった割に短いし、第一ぜんぜん萌えじゃない!!
すみません・・・勉強中です(死亡
ただ・・・いろいろ考えた結果(注:第一話のときは、ホントに何も考えてなかったのです)メインストーリーはシリアスルートで行くことに決定しました。
といっても、全体的にライトな感じは残したままで行きますし、ギャグ&萌えをねらって行きますんで、その辺を期待してる方にも喜んでいただけるような作品にしていくつもりです。
でわ・・・また第三話で〜♪





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