Moon Shade

「あ、もうこんな時間ですか……」

 うちに遊びに来ていた美汐が、時計を見て驚く。事実、辺りは既に暗くなりつつある。
      (お前の家じゃないぞ)

「そろそろおいとましますね」

「なぁ、美汐。晩飯くらい食っていったらどうだ?」

 出ていこうとする美汐を呼びとめて、俺は提案する。美汐は、どうもまだ秋子さんや名雪に対して遠慮

しすぎているというか、そういう感がある。俺達の関係を考えると、秋子さんたちとも仲良くなって欲しい。

 ……まぁ、あの二人が誰かを毛嫌いするとは考えられないんだが。

「え……でも、そちらに迷惑じゃありませんか?」

「いや、秋子さんなら一秒で了承してくれると思うぞ」

 俺は美汐の手を引っ張って階下まで連れて行き、秋子さんにことの子細を報告する。

「了承」

 

 

「……本当に一秒でしたね」

「いや、0.74秒。秋子さん了承ベストタイム新記録更新だ」

 日に日に短くなっていく。そのうち、人類の反射神経の限界まで挑戦しそうな勢いだ。

「でも、美汐のうちはどうなんだ?」

 ここまで来ておいて今更何を言うのかとも思うが、一応聞いてみた。美汐は俺の言葉に、

「……そうですね。電話お借りしてよろしいですか?」

「ああ」
(だからお前の家じゃないって)

 ぴっぽっぱ……

「あ、もしもし。美汐ですけど……はい、それで、今日はお夕飯をご馳走になろうかと……はい、それでは

失礼します、御免下さい」

 ずいぶんと短い会話の後、受話器を置いて、ため息を吐く美汐。

「どうだった?」

「一秒で承認されました……」

 うーむ、世の中に秋子さんのような人が二人も身内に居るとは……案外世の中とは広いようで狭い。

「それなら、何も遠慮することはないな」

「はい……」

「それに、すぐに本当の家族になるんだしな」

「……? あっ……」

 美汐は最初、俺の言葉の意味を捉えあぐねていたようだが、その言葉を解すると今度は真っ赤になった。

うーむ、見るからにおいしそうだ。

 

 ちゅ♪

 

「なっ……何するんですかっ!?」

「いや……真っ赤になった美汐が可愛いなー、と思って」

「……そんな」

 美汐は更に真っ赤になりながら、俺から目を背けようとする。俺はやれやれと苦笑すると、美汐の髪を

くしゃっと撫でて、

「さ、もうそろそろ行くぞ」

 

 

「さぁ、遠慮せずに食べて下さいね。お代わりもありますから」

 秋子さんが茶碗に白飯をよそいながら美汐ににっこりと話しかける。美汐も笑顔で、

「はい、有り難うございます」

 と、それに応対する。こうやって見ると、歳の分だけ積み重ねてきた秋子さんの気品に似たものが美汐に

少なからずあるような気がする。……遠回しにオバさんクサイといっているんだが(笑)

「祐一、何がそんなにおかしいの?」

 ねぃむすのーが俺に話し掛けてくる。……そんなに顔に出ていたのか……危ない危ない、美汐は変に

勘が鋭いからなるべく表に出さないようにしないと……

「今日は、美汐ちゃんが居るから和風にしてみたんだけれど……どう?」

 秋子さんが美汐に尋ねる。秋子さんが敬語を使わないのは、美汐を家族の一員と認めているからだ。

それは、俺にとっても嬉しいことだった。何といっても自分の恋人が他人に受け入れられるのは見ていて

気持ちのいいものがある。

 しかし、秋子さんの言葉に美汐は半眼になってこっちの方を見ながら、

「……祐一さん。この家で私のことをどんなふうに言ってるんです?」

「……」

 なんか、今とてつもなく恐かったんですけど……

「あら、気に入らなかった?」

「いえ、とっても美味しいです。特に、この焼き魚の火の加え方なんて絶妙ですね」

「あら、分かる? ちょっと、焼き方を工夫してみたのよ」

 ……なんか、変な方向で盛り上がっているし。

「このサラダはね、私が作ったんだよ」

「水瀬先輩も料理、得意なんですね」

「えへへ、お母さんほどじゃないけどね」

 この後も、料理の出来ない俺を置いてけぼりにして三人で料理談義に花を咲かせたのだった。……くそ、

俺も料理とか、してみるか……?

 でも、美汐が楽しそうに俺以外の他人と会話しているのを見るのは初めてなような気がする。笑うと

可愛いのは前から知っていたが、やはり美汐はもとは快活だったんじゃないかとも思う。

 

「ふぅ……秋子さん、気合入れすぎだ」

「ふふ……結局食べる祐一さんも祐一さんですけどね」

 俺と美汐は道を歩きながら話す。秋子さん、四人しか居ないのに8合も炊かないでほしいです……食べ

切れませんって……

「お、月が綺麗だな」

 上を見上げれば、夜空を照らすフル・ムーン。

「本当に」

「俺が前居たところは空気もここみたいに綺麗じゃなかったから、こんなに月も星も見えなかったからなぁ」

 そう言いながら、隣に居る美汐を眺める。月影に照らされる美汐の肌は蒼く儚い。触れば壊れてしまう

ような感じすら受ける。

「美汐って……月みたいだよな」

「……どういう意味でしょう」

 美汐は首を傾げながら、俺に尋ねてくる。俺が、他意あってそういうことを言っているのではないかという

警戒心がこちらにもひしひしと伝わってくる。……もうちょっと信頼してくれてもいいんじゃないか?

「知り合いの言葉を借りるなら、『言葉通り』だ」

「……よく分かりません」

「少なくとも」

 

 きゅっ……

 

「俺は月が好きだっていうことだけは確かだ。あの優しい光には、包まれるようにも思えるしな。決して

眩しくはないけど、確実に俺に光を届けてくれるからな」

「……でも、やっぱり太陽の方が好きでしょう?」

 美汐は誰のことを思っているのか、少しくらい声でそう言った。

「まぁ、俺も前は太陽の方が好きだったけどな。太陽の光は暖かいし、気持ちいいからな。……でも、

今の俺は月の柔らかくて優しい光を身体一杯浴びたい気分なんだ。ずっとこの月の中に身を置いて

いたいって、そう思えるんだよ」

 そう言いながら、隣の美汐の肩をそっと抱く。美汐は、黙って俺の方へ体を預けてくる。

「わ……私も、祐一さんと……ずっと一緒に居たい……です」

 それ以上の言葉は要らなかった。ただ黙って二人で月の下を歩く。時折寒さで震えるけど、そうしたら

もっとくっつけばいい。

 

 俺達はずっと一緒にいるんだから……

 


う:とりあえず、2000HitSSです。2000踏み記念&雨音さんのサイト2000Hitおめでとうを合体させて。

さ:いいのか? 無理矢理送り付けて(笑)

う:雨音さんが足跡にURLを残してたのが運の尽きだ(爆)

さ:しかも、こんなSSでいいのかよ……

う:……すいません(汗) いや、なにぶん早く送らないといけなかったもんで。

さ:……謝るくらいならもうちょっとなんとかしろよ。

う:まぁ、これで勘弁して下さい>雨音さん

さ:ここで話すんじゃない。まったく……

う:しくしく……もうちょっと思いやりを持ってくれよぅ。

さ:思いやると付け上がるからな。

う:ぐさっ……(汗) ま、まぁとにかく、今回はこの辺で失礼します。

                              このバカ
さ:雨音さん、こんなの送り付けて申し訳ないです。作者にはよく言い聞かせておきますんで……

う:それでは……

二人:さようならあぁぁぁぁっ!!






雨音のコメント

にゃわ・・・突然だったんでちょっとビックリしました(笑
ラブほの系ですね〜。
美汐〜〜〜っ♪
どうも、ありがとうございました〜!