オヤシロ様とっしょ









 その話はレナから聞いていた。
 自分の足音に混ざって聞こえる、もう一つの足音の話。
 歩くたびにペタペタと後ろから追いかけてくる、その音。
 それはオヤシロ様の足音なのだそうだ。
 この村を守る神様。
 そしてこの村に害なす者を祟る神様。
 その足音が聞こえるのは、オヤシロ様が怒っている証拠。
 村に悪さをしたか、あるいは村を離れようとしたか。
 とにかく、その音が聞こえたら、そこにはオヤシロ様が居るのだ。

 最初、その話を聞いたときは馬鹿な話だと思った。
 そりゃあ、それを話しているときのレナはどこかいつもとは違っていて、まるで幽鬼のようで恐ろしかったけれど。
 その話自体は俺にとってただの笑い話だったのだ。

 だけど、今は違う。
 今は、笑えない。
 笑うことなんかできるはず無い。
 だって………………。
 俺にも、聞こえているのだから。 


 学校からの帰り道。
 その音はいつも聞こえてくる。


 歩く。

    ペタ。

 歩く、歩く。

    ペタ、ペタ。

 歩く、歩く、止まる……。

    ペタ、ペタ、ペタ……。


 一つ、多く聞こえる足音。
 振り返ってみてもそこには誰も居ない。
 誰も居るはずがない。
 そんなのはもう、何度も確認したのだ。
 なのに足音だけは聞こえてくる。
 付かず、離れず。
 すぐ後ろにいるはずなのに、振り返っても誰も居ない。


 歩く。

    ペタ。

 歩く、歩く。

    ペタ、ペタ。

 歩く、歩く、走る。

    ペタ、ペタ、ペタ。

 
 俺は走り出した。
 怖かった。
 心が震えた。
 まるで心臓に氷の塊を押し付けられて、そのまま押しつぶされているかのようだ。
 それから逃げるために、俺は全力で走る。
 家まで辿り着けば、それで救われる……なんていう下らない幻想にすがりながら。

 全身全霊、フルスロットルで走る。

    ペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタ

 それでも足音は追いかけてくる。

    ペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタ

 どこまでも、どこまでも。

    ペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタ

 俺の、すぐ後ろから聞こえてくる!!

    ペタペタペタペタペタペタペタ、ペペッタペペッタペペッタペペッタ

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ〜〜〜〜〜〜〜!!

 スキップゥゥゥゥゥゥゥゥ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?」


 今日のオヤシロ様は、えらくご機嫌なようだった。












 全身全霊、フルスロットルで走る。

    ペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタ

 それでも足音は追いかけてくる。

    ペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタ

 どこまでも、どこまでも。

    ペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタ

 俺の、すぐ後ろから聞こえてくる!!

    ペタペタペタペタペタペタペタ、ビョンビョンビョンビョンビョン

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ〜〜〜〜〜〜〜!!

 今度はホッピングゥゥゥゥゥゥゥゥ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?」


 オヤシロ様は、微妙に古かった。












 全身全霊、フルスロットルで走る。

    ペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタ

 それでも足音は追いかけてくる。

    ペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタ

 どこまでも、どこまでも。

    ペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタ

 俺の、すぐ後ろから聞こえてくる!!

    ペタペタペタペタペタペタペタ、グチョ……

「踏んだっ! 今、何か踏んだっ!! しかもかなり新しそうなの踏んだぁぁぁっ!!

 エンガチョ、エンガチョ〜〜〜〜〜〜〜っ!!」


 しばらく、オヤシロ様はちょっと臭かった。












 全身全霊、フルスロットルで走る。

    ペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタ

 それでも足音は追いかけてくる。

    ペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタ

 どこまでも、どこまでも。

    ペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタ

 俺の、すぐ後ろから聞こえてくる!!

    ペタペタペタペタペタペタペタ、ドテッ!!

「……あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。

 凄い音したけど、大丈夫?」

 
 その日は、オヤシロ様を背負って帰った。












 全身全霊、フルスロットルで走る。

    ペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタ

 それでも足音は追いかけてくる。

    ペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタ

 どこまでも、どこまでも。

    ペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタ

 俺の、すぐ後ろから聞こえてくる!!

    ペタペタペタペタペタペタペタ、ズボッ!!

「…………えっと……………………、言っておくけど、それは俺の罠じゃないからな?

 祟るんなら、沙都子を祟ってくれ」


 翌日、沙都子は突然の下痢で欠席した。












 全身全霊、フルスロットルで走る。

    ペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタ

 それでも足音は追いかけてくる。

    ペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタ

 どこまでも、どこまでも。

    ペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタ

 俺の、すぐ後ろから聞こえてくる!!

    ペタペタペタペタペタペタペタ……ペタ、ペタ…………ペタ…………ペタ…………

「…………えっと、その…………。

 悪ぃ、ちょっと早く走りすぎたか?」


 その日は、夕日を見ながらゆっくり帰った。












 全身全霊、フルスロットルで走る。

    ペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタ

 それでも足音は追いかけてくる。

    ペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタ

 どこまでも、どこまでも。

    ペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタ

 俺の、すぐ後ろから聞こえてくる!!

    ペタペタペタペタペタペタペタ……ブゥゥゥゥゥゥゥゥン!!

「バイクかよ!! 汚ねぇぞっ、コンチキショ〜〜〜〜ッ!!」

 しかも、オヤシロ様はそのまま追い抜いて、何処かへ行ってしまった。








終わり





あとがき

というわけで、『ひぐらしのなく頃に』突発小ネタSS、『オヤシロ様といっしょ』でした。
いや、本当は誰かちゃんとしたキャラのSSを書こうと思ったのですが、まだ完結していないのでやりにくいなぁ、と。
なので、ここは一つ、原作において不思議と恐怖の象徴である『オヤシロ様』を題材に書いてみようと思いついたのです。
まさに逆転満塁ホームラン的発想!!(違

ちなみに、お気づきの方も多いと思いますが、一つ目と二つ目のネタは漫才コンビ『麒麟』のネタのパクリです。
このネタ(というかコンビ自体も)、結構好きなんですよねぇ♪

さて、次回作についてはいろいろ考えていますが……どうなるかは未定です。
もうちょっとマジメなのを書いてみたいなぁと思っているのですが、果たしてどうなるやら。
でわでわ、次があったらお会いしましょう〜♪