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 神岸あかりは知る人ぞ知る怖がり屋ではあったが、同時に責任感の強い少女でもあった。
 それゆえ、<それ>がいかに暗い噂を持つ物であったとしても、彼女に仕事を放棄すると言う考えは浮かばない。
 いつもならば、こういう事は幼なじみの<彼>に手伝ってもらうのだが・・・こちらが声をかけるよりも早くどこかに消えてしまった。
 あかりは覚悟を決めると・・・少し震える手で<それ>に触れた。
 そして・・・
 次の瞬間・・・

 ドンッ

 彼女の小柄な身体は大きく後ろに跳んでいた。



「Open your Heart」

file:01 問題編




 年に3度ある大掃除と言う<カッタルイ>行事から逃げ出していた俺を教室で待っていたのはいつものあかりのお小言ではなく、クラスメイトの怒鳴り声だった。
「おい、藤田!てめぇどこに行ってたんだよ!」
「どこって・・・裏山の神社のとこだよ」
 大掃除と言うだけあって校舎の中はどこも掃除中だし、屋上ではすぐにあかりにばれてしまう。
 だから、いたしかたなくエクストリーム同好会の練習場に逃げ込んでいたわけだ。
「・・・ところで、あかりは?」
「神岸さんは保険室だよ!掃除中に怪我して・・・って、おい!藤田!?」
 クラスメイトの言葉を最後まで聞かず、俺は教室を飛び出していた。
 まだ廊下には人が大勢いたが、その中を掻き分けるようにして保健室へと向かう。
 確信はできないが保健室へ運んだってことはそれほど・・・命に関わるような・・・怪我ではないはずだ。 
 自分にそう言い聞かせながらも、ともすれば空回りしそうなほど俺は慌てていた。
 やがて、保健室の扉が見えてくる。
 俺はラストスパートをかけ、いっきにその扉の前まで来ると・・・力いっぱい扉を開いた。
「あかりっ!?」
「あ、浩之ちゃん」
「・・・ありゃ?」
 扉の向こう・・・保健室の中には、俺の想像していた姿とはまったく違う元気そうなあかりの姿があった。
「あかり・・・お前怪我したって・・・」
「うん。掃除中にちょっと転んじゃって・・・」
 えへへ、と笑うあかり。
 あわてていた自分が恥ずかしくなる。
「相変らずドジなヤツだなぁ・・・。で?怪我は?」
「とりあえず背中に打撲だって・・・」
「大丈夫なのか?」
「うん。ちょっと痣になっちゃってるみたいだけど・・・すぐに消えるって」
「そっか・・・よかっ・・・」
「よくなぁぁぁいっ!」
 俺の言葉を遮る様に保険室内におなじみの<歩く人間ゴシップ>の声が響く。
「げ・・・」
「あ、今<げっ>て言ったでしょ?いえ、間違い無く言ったわ!」
「うるさ〜い!」
 まったく・・・あいかわらずうるさいやつだ。
「で?お前はなにが良くないんだよ?」
「そうよ!良く無いのよ!」
「だから、<なに>が!」
「あかりが怪我した事よ!」
 なに言ってるんだ?こいつ・・・。
 訳がわからない・・・が・・・。
「・・・あかり?」
 あかりにはその言葉の意味が分かったのか、表情を曇らせている。
「・・・なにか・・・あったのか?」
「あったわよ!」
「志保っ!」
 怒ったような表情の志保。そして止めようとするあかり。
 おれは・・・最悪の可能性を覚悟した。
「あかり・・・まさか」
「そう、襲われたのよ!」
「志保、止めて!」
「そんな・・・。だれだ!だれだよ!ぶち殺してやる!」
「幽霊よ!」
「・・・・・」
「志保〜だめだよ〜浩之ちゃんはそういうの信じないんだから〜」
「・・・・・」
「・・・ヒロ?」
「・・・浩之ちゃん?」
「この・・・ドアホォォォォォっ!」
 心配した俺が馬鹿だった・・・。


「で?どういう事なんだよ・・・」
「あかりが担当した場所が美術準備室だったのよ」
「・・・だから?」
「ダメだよ、志保。浩之ちゃん、そういう噂に詳しくないんだから・・・」
「そうだったわね」
「なんなんだよ・・・?」
「この学校の美術準備室にはね・・・幽霊が出るのよ」
「あれだろ?学校の七不思議ってやつだろ?」
 都市伝説と同じで、ちょっとした出来事が噂となって広がるうちに尾ひれがついちゃった、ってやつだ。
「甘い!いまどきただの七不思議なんかの噂にするほど高校生は暇じゃないのよ!」
 おまえが言うな、おまえが・・・。
「この噂にはれっきとした<元>があるし、実際に被害者もあかりだけじゃないのよ!」
「それって、ただドジって怪我したのを、おばけのせいにしてるだけじゃねーのか?」
「ちっちっちっ!あかり、どういう状況で、どうなったのかを説明してあげて」
「え?あの・・・掃除してたら・・・いきなり何かに突き飛ばされたみたいになって・・・」
「・・・ふむ・・・志保はともかくとしてあかりがそんな馬鹿な嘘つくわけ無いしなぁ・・・」
「どういう意味よ〜!」
 そのままの意味だ。ちょっとは自覚しろよな・・・。
「しかし・・・なにかに突き飛ばされた・・・か?」
「うん。身体が・・・浮いたの」
 その状況を思い出してし、あかりの表情が曇る。
 どうやら、単純にあかりのヘマというわけではないようだ。
「・・・よし。わかった」
「なにが?」
「あかり。心配するな。この事件・・・すぐに解決してやるよ」
「へ?」
「浩之ちゃん・・・あんまり危ないことは・・・」
「大丈夫だって!じゃあな・・・」
「ど、どういうことよ!?説明しなさ〜い!」
 志保の追求を無視し、俺は保健室を出た。


 
 餅は餅屋・・・。
 ならば、心霊現象はオカルト研究会に。
 コンコンっと軽くノックをし、返事を待たずに扉に手をかける。
 返事を待たずに入ることは礼儀正しいとは言えないが、なにせここの主の声はさすがの俺でも扉越しに聞き取るのは不可能だ。
 というわけで、当人から特別に許可を得て、返事を待たずに入る事を許してもらったのだ。
 しかし、この時は違った。
 ガラガラッという音をたてて、勝手に扉が開いたのだ。
「あれ?」
「やっぱり藤田さんでしたね♪」
「琴音ちゃん?」
 オカ研の部室の中から顔を出したのは俺の予想に反して先輩ではなく、琴音ちゃんだった。
 そういえば、彼女・・・この研究会に入ったんだった。
「お待ちしてましたよ」
「お待ちしてました・・・って、どういうこと?」
「フフ、来栖川先輩が藤田さんがここに来る事を予知したんですよ」
「へぇ・・・すごいな」
 俺は驚きながら部屋の奥・・・この部屋の雰囲気にはちょっと似合わないような可愛らしいソファーに座った芹香先輩へと視線を向けた。
 おなじみの魔女さんルックでソファーにちょこんと座っているその姿は、年上だということを忘れてしまいそうになるほどなんとも可愛らしい。
「先輩の占いはよくあたるね・・・え?占いじゃない?」
 コクンと頷く先輩。
「・・・単純な推理です?神岸さんが怪我したという噂を聞きましたから?・・・って、なるほど・・・」
 確かに単純な推理だ。
 つまり、あかりが美術準備室で怪我したという噂を聞いた。美術準備室の噂はほとんどの人が知っている。すなわち、犯人が幽霊である事を。
 また、あかりと俺との関係はこれまた周知の事だ。あかりが怪我をしたのに、俺が黙っているわけがない。
 以上のことより、俺は怪我の原因をどうにかしようとする・・・が、犯人は幽霊でどうしようもない。
 この状況から俺が取るであろう行動は、無鉄砲に飛び込んで行くか、または<その手>に強い人間に相談するかだ・・・。
「さすがは先輩。・・・じゃあ、単刀直入に聞かせてもらうけど・・・<いる>の?」
 再びコクンと頷く先輩。
「・・・え?同い年くらいの女の子の霊?・・・この学校の生徒だったのかなぁ?」
「あれ?藤田さんはあの噂を知ってるんじゃないんですか?」
「え?いや・・・幽霊が出るって話しは知ってたけど・・・」
 ってか、ついさっき知ったんだけどね。
「その幽霊の<元>の噂は・・・?」
「ああ・・・そういえば・・・聞いてないや」
 そういえば、志保のヤツもこの幽霊話にはれっきとした<元>があるって言ってたな・・・。
「私もつい最近知ったばかりなので、正確さはあまり期待しないで欲しいですけど・・・話しましょうか?」
「ああ。おねがい」
「わかりました。えっと・・・この<元>っていうのは・・・ある女の子の自殺なんです」
「自殺?」
「はい。今から15年前、この学校の3年生に月島由佳という女の子がいました・・・」
「ちょっと待って!・・・名前・・・?」
「あ、幽霊は別にして、この事件は実際にあったことなんです。当時の新聞にものってましたから、名前も本名ですよ」
 なるほど、<れっきとした>の意味がわかった。
「その月島由佳って女の子には好きな男の子がいました。小学校からずっと同じ学校に進んできた男の子です。しかし、彼女はなかなかその想いを伝えられずにいました・・・。そして、ついに二人は別れ離れになら無くなりました。進路先が分かれてしまったのです。彼女は悩みました。このまま想いを告げられずに分かれるのは嫌だ・・・。そしてついに・・・卒業式を目の前にしたある日、彼女は自分の想いを綴った手紙を彼のカバンの中にこっそりいれておいたのです。・・・しかし・・・」
 そう・・・ここで<しかし>が来てしまうんだな・・・。
 もし、<しかし>が来ず、彼がしっかりと手紙を受け取っていたならば・・・それは青春の1ページとして終るはずだったんだ・・・。
「しかし・・・、その男の方が酷い人で、彼女が書いたラブレターを友達と一緒に笑い者にしてしまったんです・・・。彼女は彼の手から手紙を取り返すと、その足で屋上へ行き・・・そして飛び降りました・・・。と、言うのが事件の大まかなあらすじです」
「なるほどねぇ・・・だから女の子の幽霊だったわけだ・・・」
 しかし・・・そうなると困ったな・・・。
「単純に芹香先輩に除霊してもらうだけってわけにはいかないなぁ・・・」
 いや、言っておくが別に女の子の幽霊だからというわけではないぞ?
 ただ自縛霊となった理由が理由だけに、相手の意見を無視して無理矢理除霊してしまうってのはなんとも後味が悪そうだ。
「ええ。ですから来栖川先輩と相談して、藤田さんが来るまで待ってたんです」
「・・・え?どうしましょうか。って?・・・そうだな・・・やっぱり自分から昇天してくれる様に説得するしかないだろうね」
 しかし、芹香先輩は小さく首を振った。
「・・・何かに怯えてる?話しを聞いてくれない。って?」
「そうなんです。こちらを意図的に攻撃してくるようなことは無いんですが、必要以上に近づこうとすると・・・」
「ふぅん・・・なるほどね。どうやら何か事情があるみたいだな・・・」
 自縛霊といってもピンキリだが、その全てがこの世になんらかの<未練>を残していると言う共通点を持っている。
 その<未練>を解決してあげなれければ霊が自分から昇天してくれる事はない。
「・・・それじゃ、芹香先輩。またセリオに情報収集頼んでもいいかな?」
 一般高校生でしかない俺では15年も前の出来事のことを調べるのは難しい。しかし、来栖川の力とセリオの情報処理能力を使えば、それこそ当時の警察の資料にまで手が伸ばせるのだ。
「・・・了解です」
「藤田先輩。私は・・・」
「そうだな・・・琴音ちゃん・・・たしかこの美術準備室で怪我をしたのはあかりがはじめてじゃないんだよね?」
「はい。この15年間に何人も怪我しているそうです」
「よし。それじゃ、その怪我した人達について、できるかぎり詳しく調べてくれないかな?氏名、年齢、性別、どういう状況で怪我したのか、怪我の度合いは、そういったことを・・・」
「ハイ♪」
 志保にでも頼めばもっと効率的なのだろうが、事情が事情だけにあいつみたいにうるさい奴には黙っておきたかった。それに、奴だと正確さに欠ける。
「良し。それじゃ二人とも頼んだよ」
 まぁ、この二人に頼めば十分だろう。
 あとは、レスポンスが帰ってくるまで待つだけ・・・。



 翌日。
 オカ研の部室で俺は芹香先輩から渡された資料に目を通していた。

・資料1
 事件関係者は全部で五人。
 被害者(?)である少女、月島由佳(18歳。A型。性格は大人しい。1年の時に美術部に入っていたがすぐに辞めている。成績は良く、某有名国立大学に進学予定だった)と彼女が手紙を送った相手と思われる大塚毅(18歳。AB型。性格が良く、女子にもてた。美術部の部長をしている。美大へと進学予定・・・のちに見事合格している)。そしてその友人である三人の男子生徒。
 資料には彼らの生活態度までも記されていたがそのうちの誰もいたって普通の少年だった。とくに悪をやっていたという者は一人もいない。
・資料2
 事件当時の彼女、彼らの行動は噂どおり。
 大塚毅は自分のカバンの中に入っている見なれない手紙を発見。それを取り出し友人の三名と開けようとした。しかし、それより早く月島由佳が彼らの手からその手紙を奪い去る。突然のことに驚く彼らを振りかえることなく、彼女は教室を飛び出して行った。
 その後、彼らは訳がわからず教室に残っていた。ゆいいつ大塚毅が少女の後を追っているが見失ってしまった。
 また、教室を飛び出した月島由佳を複数の生徒が目撃している。が、階段を上る姿を見たものはいるが、屋上に向かう姿を見たものはいない。
 なお、正確な証言ではないが、大塚毅(と思われる人物)が美術室へ入って行く姿を見た者がいる。また、彼が教室へ帰って来たのは月島由佳の自殺後である。
・資料3
 関係者4人の証言に虚偽の部分は無し。
 月島由佳の自殺の直後、大塚毅ら4人はすぐに事情聴取を受けている。
 彼らの証言は4人ともほぼ同一。
 大塚毅のかばんに入っていた手紙を直感的にラブレターだと思った(白い封筒でハート型のシールで止められていたらしいので、ラブレターだと思う事に違和感は無し)彼らは、その事で毅をからかう。しかし突然月島由佳がそれを奪い去ったのでかなり驚いたらしい。どうやら、4人ともその手紙が月島由佳からのものだとは知らなかったようだ。
 また、彼女を追って教室を飛び出した大槻毅はしばらく色々な場所を探し回った様だが、結局屋上まではいかなかったらしい。
・資料4
 月島由佳の自殺の理由について。
 彼女の身辺から自殺を思わせるようなものは発見されなかった。
 そのことから、直前のラブレター騒ぎが原因と思われる。(が、当時の警察はその理由に納得できなかったようだ)
・資料5
 警察は自殺のほかに事故、他殺の方面でも捜査している。
 それは月島 由佳が落ちてきたところは多くの目撃者がいるのにもかかわらず、落ちる瞬間を見たものがいなかったからだ。
 屋上には当然フェンスが設置されており(現在の物ほど丈は無いが)、フェンスに破損等は見られなかった。
 よって事故の可能性はきわめて低い。
 当時、屋上へ登って行く人の姿はいっさい目撃されていない。また、屋上には争ったような形跡は無かった。
 ただ、不思議な事に自殺した彼女の身体からは持っているはずの手紙が見つからなかった。
・資料6
 月島由佳の死因はやはり飛び降りのもの。
 月島由佳は綺麗に頭から落ちた様で、頭蓋骨骨折により脳を損傷し、ほぼ即死したものと思われる。
 頭蓋骨の割れ方も高所から飛び降りた時に出来るものと一致し、屋上から彼女のくつが発見された事からやはり屋上から飛び降りたものと思われる。
・資料7
 当時の関係者の行動の時間割り。
 15時35分:大塚 毅、手紙を発見。
   時36分:友人3人と一緒に手紙を開けようとする。
     同上:月島 由佳がその手紙を取り返し、教室を飛び出す。
   時38分:廊下を走る月島 由佳を目撃。
   時39分:大塚 毅が教室を出る。
   時52分:再度廊下で月島 由佳が目撃される。
   時56分:美術室へ入る大塚 毅(と思われる)の姿が目撃される。
   時57分:階段を上る月島 由佳の姿が目撃される。
 16時01分:月島 由佳が自殺。
   時04分:通報。
   時05分:大塚 毅が教室へ戻ってくる。

「なるほど・・・」
 これで<何故美術準備室なのか>はわかった。
 しかし、まだピースがたらない。
 これだけではまだ、自縛霊となった彼女を説得するには足らない。
「私のほうの資料も見てください」
「うん」
 結構調べてきたんですよと、オススメしてくる琴音ちゃんの勢いに負けて俺は資料を受け取った。

 過去15年間の被害者のリスト。
 最初の被害者(と思われる)は月島 由佳の自殺から2週間後。
 美術顧問の山下 源八(52)男性で、強い力に吹き飛ばされ、左肩脱臼、打撲、脳震盪。
 その後、同年に生徒の森田 信子(17)女性。転倒し打撲。
 14年前に矢野 一哉(18)男性。床に叩き付けられ右腕複雑骨折。
 13年前に合田 竜馬(16)男性。強い力を腹部に受け肋骨骨折。
 11年前に瀬口 真知子(38)女性。転倒した際後頭部をぶつけ脳震盪。
 同年に都築 篤(17)男性。吹き飛ばされ転倒。その際棚から石膏が落ちてきて肋骨骨折、内臓損傷。
 9年前に間 憲康(27)男性。吹き飛ばされ左肩骨折、頭蓋骨損傷。
 8年前に天野 洋子(17)女性。吹き飛ばされ打撲。
 5年前に阿部 加奈子(16)女性。転倒し擦過傷。
 4年前に瀬戸口 信弘(18)男性。頭から倒れ頭蓋骨陥没。
 3年前に都丸 しのぶ(16)女性。転倒し打撲。
 そして、本年神岸 あかり(17)女性。転倒し打撲。

「・・・そうか・・・」
「なにかわかったんですか?」
「ああ。とりあえず<何故彼女が自縛霊になったのか>はわかった」
「じゃあ!」
「いや・・・まだだ。まだ足りない」
「そうですか・・・」
「だが・・・俺の予想が正しければ<彼>に会えばピースがはまるはずだ」
 <彼>が持っているだろう<あれ>を手に入れれば、彼女の説得は可能になる。
「芹香先輩。<彼>と連絡・・・取れますか?」
 コクンと頷く芹香先輩。しかし・・・彼女は「でも・・・」と続けた。
「でも?・・・っ!?・・・そんな・・・」



 <彼>こと大塚 毅の家にやってきた俺と琴音ちゃんを迎えてくれたのは優しそうな彼の母親だった。
「最初、あの事件に調べてるって聞いてどうしようか迷ったんだけどね・・・君の声があんまりにも真剣だったから・・・」
 彼女が迷うのも無理もない。いまさら過去の事件を掘り返して欲しくないのだろう。
 <彼が死んでしまった今となってはなおさらに>
「まさか、お亡くなりになってるとは思いませんでした」
「あの事件から4年後よ。イラストレイターとして就職先が決まっていたのにね・・・。私は・・・てっきり由佳ちゃんが連れて行ったのかと思ってたわ」
「彼女は、おそらくまだ毅さんの死を知らないでしょう」
「・・・そう・・・可哀想な子・・・」
「そんな彼女を救うために、協力して欲しいんです」
 端から見れば、あるいは間抜けな話しだったかもしれない。
 なにせ、幽霊なんて非現実的なものを救いたいと言っているのだから。
 だが、彼女はこちらの言葉を真剣に受けとめてくれた。
「わかったわ・・・で?私は何をすれば良いのかしら?」
「<あれ>を渡してください」
 そう言った瞬間、彼女の表情がこわばったのを、俺は見逃さなかった。
「・・・<あれ>って?」
「ごまかさないでください。毅さんは警察に嘘をつきました。・・・いや、聞かれ無かったから言わなかっただけかもしれない。でもおそらく彼は聞かれても答えなかったでしょう」
「・・・・・」
 沈黙を守る母親に対して、俺は自分の考えが正しかった事を確信しつつ、続けた。
「毅さんはあの日<あれ>を持って帰って来たはずです。警察が<あれ>を見つけられなかったのは、彼が持ちかえったからです。でも、誰にもその事は責められない。彼にとって<それを証拠として警察に取り上げられる事>は耐えられなかったはずでしょうから。ですが・・・毅さん亡き今、<あれ>は・・・本来持つべき人の元へ返すべきなんじゃないでしょうか?」
「・・・・・」
 彼女は長い沈黙を守った後・・・やがて決心した様に席を立った。
 そして、毅さんの仏壇から<あれ>を取り出して、渡してくれた。
「・・・お返しはできないと思いますよ?」
「構わないわ。君の言うとおり、それは彼女に返してあげて」
「・・・ありがとうございます」
 泣きそうな表情の母親に、俺はただ頭を下げる事しかできなかった。



 さて、これで全てのピースが集まった。
 後は彼女の元へ行き、説得するだけだ!








 さて・・・「お〜ぷん・ゆあ〜・はぁと」問題編・・・別名伏線編です。
 問題って言うほど、推理物っぽくならなかったのです・・・。
 しかし・・・伏線・・・上手くひけてるでしょうか?
 ラストの部分なんか、もう笑っちゃうくらい<バレバレ>で・・・(爆笑
 いや〜やっぱり伏線は難しいですね〜。
 あ、でも一つだけ・・・自分でも上手く伏線ひけたなぁって思うところがあるんですよ〜。
 どこかは言いませんけど(ぉ
 さて・・・とりあえずそのまま解決編へ行ってくれて構わないんですけど、できればいろいろ考えてくれたりすると嬉しいです。
 でわ、解決編へどうぞ〜。


〜解決編へ〜






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