ごった煮SS・とりとめのないストーリー2
『協調性に欠ける乙女達』



 空には月がある。
 夢のように淡く、しかし物語に登場するほど美しくはない、ただの黄色の月。
 午前中まで雨が続いていただけに空気が澄んでいるのか、はたまた都会の喧噪から離れた場所だからなのか、その周りを囲むように小さく、無数の光源が見える。
 時刻は夜だ。・・・夜とは一概に言っても酷く判断は難しい。日が沈めば単純に夜と称するのか、はたまた時刻によって区切るのか・・・。
 まぁその条件が何であれ、現在が夜であることはほとんど間違いない。
 天上から威圧するように熱気を送り込んでいた太陽は、延々としつこく世界を照らし続けていたが、今はそれも地に沈み、心地よい夜気がとって変わっている。さらに時刻はすでに8時をまわっているはずだ。
 これだけ条件がそろっているのならば「夜」と呼んでも過言はあるまい。
 さて・・・たしかに時刻は夜ではある。しかしながら、その夜の静寂にふさわしくないほど、その場所は活気と紅い明かりに満ちあふれていた。
 それは小さな町の、小さな神社の、小さなお祭りだった。
 海を望む丘の上に作られた小さな神社。その神社への参道には赤い行燈と、活気あふれる屋台がならび、普段は伽藍としている境内には数え切れないほどの人が集まっている。
 それは一年に一度だけのお祭り。
 地元の人すら忘れがちなその神社にとっては一年に一度だけの大量収入日・・・などと無粋なことは言わない。
 いつ頃から行われているのかは定かではない。ただ、遠い昔には意味があり、そして今はすでに意味の失われた一年に一度の・・・。
 だが、そんなことはけして重要ではない。ようは、今ここにいる人間達が楽しければ、それでお祭りとしての価値はあるはずだ。
 金魚すくいや射的などこの日しかできない遊び、また、なぜかこの日だけは妙に美味しく感じる安物のたこ焼きや焼きそばを食べる。子供達は楽しげに走り回り、大人もその風景の中に過去の情景を思い出す・・・ここはそんな場所。
 ・・・と、その中を、場違いなほどの早さで走り抜けてくる少女が三人いた・・・。



「はぁはぁはぁ・・・」
 先ほどの場所からいったいどれくらい離れられたか・・・人混みを縫って走ってきたせいで距離感は分からなかったが、あの人だかりが見えない位置まできているのだから問題ないだろう。そう判断して柏木梓は足を止めた。
 茶色味がかった髪の毛は短く、どこか少年のような印象を受けるその少女は足を止めたその場所でうつむき、ドッと流れ出る汗を拭うこともせずにただ荒れた呼吸を正常に戻すことを優先した。
 暑い。ひたすら暑い。
 昼間ほどの殺人的な厚さではないものの、大量の人と、左右をふさぐように並ぶ屋台の数々のせいで涼しい夜気は梓の所にまで届いては来ない。
 結局、はぁはぁと息を吐き出し、体内の熱を逃がすしか、この火照った身体を冷やす術はなかった。
 陸上部、現役スプリンターで学内には敵なしの梓がここまで息を荒げているのには三つの理由がある。
 一つ、人混みの中を走るというのは普通に走るのとは全く違う筋肉の使い方をする。そのために変な疲れ方をしてしまったのだ。
 二つ、服装も悪い。お祭りへ行くということで、梓はタンスの中からお気に入りの明るいオレンジ色した浴衣を引っぱり出していたのだ。もちろん、上が浴衣なのならスニーカーを履くわけにもいかず、下駄を履いている状態だ。この状態の走り難さと言ったら・・・梓は体操服とスニーカーを発明(?)してくれたどこかの誰かに感謝した。
 ・・・この二つだけでも、梓を疲れさせるには充分なのだが、残念なことに後もう一つ、重大な要因が存在している。
 それは、精神的な疲労だ・・・。
「ふぅ・・・ビックリしたぁ・・・」
「はぅはぁはぁぅ・・・いきなり・・・走り出さないでください」
 梓はうつむいていた頭を持ち上げ、自分の後ろを走ってきた二人の少女達に視線を向けた。
 前者の名前は来栖川綾香。来栖川グループを統括する会長の孫で、日本ではおそらく最高のお嬢様だ。
 といっても、お嬢様らしいのはその造形と梓が見惚れるほど美しい髪だけで、表情や仕草、口調はまったくもってお嬢様らしくない。梓のように少年、といった感じではないのだが、間違ってもお淑やかなどという言葉は当てはまらないほどの・・・古くさい表現をするならば・・・お転婆だ。
 そんな彼女は今、梓同様に浴衣を着込んでいる。彼女のは水色の生地に白地の波のような模様が描かれている物で、あまり高級品ではないように見える。ただし、それは見かけだけだということを梓は知っていた。
 最初にその事を綾香に指摘したとき、彼女が教えてくれたのだ・・・この生地には極細のチタン繊維が細かく編み込まれていて、防刃機能はもちろん、防刺機能もある・・・と言うことを。
 ちなみに、お値段の程を伺ってみたところ、梓は・・・驚くよりも呆れた。そんな大金をかけてまで、果たして浴衣を着る必要があるのか、と。
 続いて、後者。名前は遠野秋葉。遠野財閥という古くからの・・・古さで言えば来栖川など相手にならないほどに・・・血族企業の当主で、こちらも正真正銘のお嬢様だ。しかも、前者の綾香とは違ってこちらは姿形だけではなく性格や口調もお嬢様なのだ。
 黒く長く、しっとりとして艶やかな髪(この髪を見るたび、梓は遺伝子を恨まずにいられない)にややキツめの瞳。ですます口調に丁寧な立ち振る舞い。本当に幼い頃からしつけを受けてきたのだろう。
 彼女も二人と同様に浴衣姿だ。朱い生地に金の刺繍・・・およそこんな小さな町の小さなお祭りにはふさわしくないド派手な浴衣だった。とうぜん、随分なお値段なのだろう・・・。
「・・・・・」
 自分と同じ条件で走ってきた筈なのにほとんど息を切らせていない前者と、はげしく息を切らせながらも驚くことにまったく汗が流れていない後者を、梓は恨めしげに睨み付けた。
「あははっ。もしかしてさっきのあれ、怒ってる?梓ちゃ〜ん」
「怒ってるよ!ついでに、その呼び名にも!!」
「気にすることはありません、梓さん。さっきのは不可抗力でした」
「不可抗力?不可抗力ときましたか!あんた一度でも良いから辞書で不可抗力って言う言葉を調べたことがあるのか!?さっきの状況は日本人100人中99人は不可抗力じゃなかったと判断するだろうよ!ちなみに!!99人に含まれない一人の答えは「ワカラナイ」だ!」
 もともと激情家の梓は、一度ヒートアップすると時々制御がきかなくなる。
 今もその状態のようだ・・・。
「落ち着いてよ、梓。もともと、シツコイあっちが悪いんだからさぁ」
 先ほどまで、三人はあっちこっちの屋台を巡っていたのだ。しかしそこに邪魔者が現れた。
 明らかに地元の人間とは思えない5人の男達。それぞれ同じような金髪で、同じようなピアスで、同じような笑顔を浮かべたのその男達は、女三人で楽しんでいた梓達に声をかけてきたのだ。
 まぁ、それは当然といえるだろう。なにせ三人が三人とも美少女なのだから、ナンパしてくるのも無理はない。そして、コレもまた当然なのだが、彼女たちはそれを拒否した。
 ・・・と、そこで終わっていれば良かった。
 しかし、その男達は酒でも入っていたのか、それともこのお祭りという雰囲気そのものに酔っていたのか・・・拒否する彼女たちにしつこく付きまとい、厭らしい言葉を投げかけ、あろうことか秋葉嬢に抱きつこうと・・・、したところで、問答無用の綾香のハイキックが男の頭を吹き飛ばしたのだった。
「いやぁ、あれは確かに不味かったわね。浴衣でハイキックは・・・」
「そうです。まさか浴衣であんな事をするなんて・・・」
「そういう問題じゃない!っていうか、秋葉さん・・・あんたも自分のやったことに反省しなよ・・・」
「私は何もしてませんけど?」
「あんたがあんな事言うから、事態を収拾出来なくなったんじゃないか・・・」
 綾香が浴衣でハイキックまでして守った相手は・・・怯えて彼女の背中に隠れるほど可愛らしい少女ではなかった。まったく驚いた様子もなく、平然と蹴り飛ばされた男と、まったく予想外の出来事に硬直するその仲間達を睨み付け、そして効果的な短いその一事を言い放った。

『失せなさい。下郎』

 あまりにも短く、簡潔すぎるために逆に意味が伝わりにくかったその一言。
 周りにいた全ての人間がその一言に一瞬硬直し・・・そして、次の瞬間には爆発していた。
「てっ・・・」
 激情に顔を真っ赤に染めた男達が何かを言おうとした。しかし残念ながらそれは完全に口の外に出る前に遮断されることとなる。
「ハッ」
 軽い・・・綾香の本当に軽い、ジャブのような掌底が正確に相手の顎に突き刺さったのだ。
「な・・・」
 そのあまりの早業に、他の男達は驚きの声を・・・あげようとして、かわいそうなことにまたもや綾香の掌底や蹴りによって遮断されてしまった。
 綾香の動きは素晴らしい動きだった。一対五でありながら、その最小限で最大の効果を出すことの出来る有効打を正確にたたき込み、一撃で相手の反撃能力をなくさせていく。
 そもそも、一人対何人であろうと、相手が全員綾香の動きについて行けるほどの能力がない限り、それは一対一と何ら変わりない。そして一対一であるのならば、綾香が負ける道理もなかった。
 結局、勝負は最初からついていたのだ。
 わずか一分にも満たない時間・・・その間に男達は全員その場に倒れ伏していた。
「手応え無いわねぇ」
「所詮、小者です」 
 人混みの中に出来た小さなエアポケットの中で、倒れ伏した男五人を見下す少女達・・・それは何とも表現にし難い、不思議な光景であった。
 そして、残念なことに梓にはその状況に耐えられるような神経は無かった。
「走ってっ!」
 綾香と秋葉の手を取り、梓は走り出していた。
 一刻も早く、その状況から逃れるために。

 というわけで、冒頭へ至るわけだ。
「梓さんって、性格に似合わず小心なんですね」
「性格に似合わずっていうのがすごく気になるけど・・・。別にそういう単純な問題じゃないわよ」
 秋葉や綾香は別に良い。どうせ地元の人間ではないのだからどんな噂がたとうが問題はないだろう。
 しかし、梓は地元なのだ。もしかしたらあの人だかりの中にも、学友が居たかも知れない。
 ・・・梓は、約1名には徹底的に乱暴者になることはあるが、基本的にその他の人間には優しくて面倒見のいい女性という印象を与えていた。性格は確かに男気あふれる(本人が聞けば怒り狂うだろうが)性格であるが、だからといって「がさつ」というわけではないのだ。
 そのため、梓は学内で多くの生徒から信頼と尊敬の対象(一部の同性からはそれ以上の対象)として見られているのだ。
 ・・・べつにその立場が失われるから問題なのではない。問題なのは、失われ方そのものなのだ。
 先ほどの状況・・・噂となっておそらく町にまわるだろう。
 しかし、噂とは総じて正しくは伝わらないものだ。
 名前も分からない綾香達の事はまず最初に無視される。そして、地元では結構有名な梓の名前が一番に現れるのだ。
 曰く・・・

『あの柏木梓は、この前のお祭りの時に言い寄ってくる十数人の男達をちぎっては投げ、ちぎっては投げ・・・たった一人で全員病院送りにした』

 とかなんとか・・・。
 その、あまりにもあり得そうな未来像を想像し、梓は頭を抱えた。
「ほらほら、落ち込まないの。昔の人はよく言ったものよ・・・『なるようになれ』って」
「あんたが言うな!あんたが言うなぁぁぁっ!!」
 梓は、自分の不幸さを嘆いていた。
 なぜ自分はこんな連中と一緒にいるのか、と。
 ・・・さて、随分遅くなったが、ここでこの三人がなぜ一緒にいるのかという事を説明しておこう。
 そもそも、この三人は古くからの親友というわけではない。綾香と秋葉は以前に数度顔を合わせたことがある程度で、梓に至っては今日の昼に初めて顔を合わせたのだ。
 時節は夏。学生達にとっては天国(受験生を除いて)の夏休み。そんなわけで、避暑もかねて来栖川と遠野の両家は鶴来屋へ泊まりに来ていたのである。さて、そんな旅行先で、タイミング良くお祭りが行われると言う・・・参加しない人間が居るだろうか?
 しかし、不案内な彼女たちをそのままお祭りへ行かせるわけにはいかない。なにせ鶴来屋にとってこの両家は最高級の得意先なのだ。案内役をつける必要がある。
 かといってだれをつける?従業員か?ただでさえ人の出入りが激しく忙しいこの時期。古くからの信頼し安心できる従業員達は一人でも惜しい。
 ならば、だれか外の人間に頼むか?馬鹿な・・・得意先の案内を信用できない外の人間に頼むなんて言うのは自殺行為だ。
 鶴来屋の仕事をもっておらず、さらに鶴来屋にとって不利な事をしないと絶対的に信用できる人物・・・。
 ・・・というわけで、鶴来屋の会長である柏木千鶴の妹、柏木梓が抜擢されてしまったのだ。
 当然の事ながら、梓は最初反対した。自分はそういう事・・・つまり接待じみた事・・・が出来るような器用な性格ではないことを主張し、他の人を選ぶように頼んだのだ。
 だが、認められなかった。梓の他にこの任務を任せられる人間と言えば、彼女の妹たちである三女の楓か、四女の初音しかいないのだ。その事実を突きつけられた瞬間、梓には諦めて従うという選択肢しか残っていなかった。なにせ、三女の楓は自分以上に接待に向いてない性格だし、四女の初音はつい昨日まで夏風邪で寝込んでいて今だ完調では無い様子。妹思いの梓はそんな二人にこんな任務を押しつける事は出来なかった。
「はぅ・・・でも、こんな苦労は予想してなかったわよ・・・」
 ぼやかずにはいられない。
 当初、相手がお嬢様連中だというを聞いたとき、梓の脳裏には・・・きらびやかなドレスを身にまとい、暑苦しい黒スーツを着込んだ屈強なSPに守られながら・・・『オーッホッホッホ』とか、『なんですか、この不味い焼きそばは!シェフを呼びなさい!!』とか、『フンッ!金魚なんかすくってどうするんですか。私(ワタクシ)の家にはあんな雑魚を入れるような水槽はございませんことよ』とか・・・鼻へし折たくなるような事を言ってくれる少女達の姿が浮かんでいたのだが・・・。
 実際に夕方鶴来屋に迎えに行ったとき、目の前にいたのはこの・・・まるでコントのように突拍子のない行動をとるお二方であったのだ。
 なんで自分はこんな二人とお祭りに来てしまったのだろう・・・。
「あら、それは私の台詞です」
「あたしもよ」
 内心にしまっておくべき言葉が口に出ていたのか・・・この辺の迂闊さというか素直さというか、それが梓が接待役に向かない理由である・・・秋葉嬢、綾香嬢共に不服の意を示した。
 今まで描写がなかったために誤解していたかも知れないが、彼女たちは別にたった一人でこの隆山まで来ていたのではない。当然、家族、友人と共に来ているのだ。
 遠野秋葉は、兄である遠野志貴、使用人の琥珀と翡翠、さらに何故かついてきた人外・・・アルクェイド・ブリュンスタッドとシエル。計六人で鶴来屋に泊まっているのだ。・・・ちなみに、アルクェイドとシエルに関しては支払いは別である。
 一方、来栖川綾香は、姉の芹香、執事のセバスチャン、メイドロボでありいまいち役に立たない護衛役のマルチとセリオ。そして恋人未満友達以上の藤田浩之。計四人と二体でやってきている。ちなみに、メイドロボは宿泊料は取られないが、その代わりに特別料金を取られる。
 ・・・というわけで、彼女たちは別に一人っきりというわけではなく、お祭りにこのような面子で来なければならない事は不本意な事なのである。
 では、何故彼女たちがこんな不本意な形でお祭りに出向いているのかというと・・・。
 この町にやってきて、お祭りのことを聞いた彼女たちは・・・その瞬間にはなんの根拠もなく「意中の彼」と一緒に行く事を決めていたのだ。もちろん、それが当たり前のことであると信じ込んでいるのだから、その「彼」に約束を取り付ける事など頭にもない。
 しかし、事態は彼女たちの知らないところで意外な展開を見せていた。
 半場引っ張られるようにして連れてこられた志貴青年と、同様に拉致のごとく車に乗せられた藤田浩之は、その似通った境遇のため、意気投合してしまったのだ。さらに、そこへ現れる柏木家の跡取りである柏木耕一・・・。彼も又、二人と似通った生活環境を持つ男性で、当然これまた意気投合。
 普段複数の女性に囲まれ、いろいろフラストレーションがたまっていたのか・・・夕方には、三人は肩を組みながら飲屋街へと消えていったのだった・・・。
 その事実を知った綾香と秋葉は愕然とした。
 しかし、すでに取り寄せた浴衣は届いていたし、ホテル側からは案内役が来ている状況・・・まさか今更行かないなどという訳にも行かず・・・結局悲しく女三人でお祭りへ足を運ぶ羽目になってしまったのである。
「本当なら、兄さんと一緒に来るはずだったのに・・・」
「兄さんって・・・秋葉ってば、もしかして・・・」
「あ、あなたには関係のないことです!」
「あぁ〜怪しいわね〜。もしかして、もしかしてぇ・・・禁断の恋ってやつぅ♪」
「違います!確かに兄さんは兄さんですけど、血のつながりは無いんですから法的にも問題は・・・って、はぅうっ!?」
 何を思ったか、思いっきり自爆をしてしまった秋葉嬢。と、それをよりいっそう楽しそうにからかい始める綾香。
 どうでもいいが、この二人はなんでこんなに立ち直りが早いのだろう・・・と梓は呆れるよりむしろ感心した。
 あまり深く考えたないタイプの人間なのだろうか?とも思うのだが、なんとなくそうではないような気がする。
 きっとこの二人は・・・楽しいときには楽しむ・・・ってことをしっかりと分かっている人間なのだ。きっと、悲しいことをいっぱい知っているのだろう。だから、楽しいときには、悲しいことを振り払って、おもいっきり楽しむのだ。
 梓には・・・それが出来なかった。悲しいことならいっぱい知っている。だけど、だからこそ楽しいときにも悲しいことが起こるんじゃないかと怯えてしまう性格になってしまっていた。それがいつ頃からなのか、よくは覚えていない。ただ、幼い頃は、もっと素直に生きられたような気がする・・・。
(結局、あたしが一番弱いのか・・・)
 自分より年下の少女達のほうが、よっぽど強い人間だ・・・。
「で?梓はどうなの?」
「ふぇ?」
 唐突に、そう声をかけられて梓は何のことかわからずに首を傾げた。
「だぁかぁら!梓は耕一さんと上手くいってるの?」
「な、な、なぁっ・・・!」
「・・・分かりやすいわね・・・」
「分かりやすすぎますね」
 耕一という名前が出た瞬間に、顔を真っ赤に染める梓・・・。
 俊敏に地を這う鯨。軽やかに空を舞うミミズ。ポーカーフェイスの梓・・・とりあえず、天地がひっくり返ってもこの三つだけは絶対に見られることはないだろう・・・。
「梓・・・あなたって本当に素直なのね」
「素直と言うよりは、むしろバカ正直ですね」
「う、うるさいわぃ・・・」 
 自分の思ったことがすぐ顔に出てしまうっていう事は分かってはいるのだが、どうしようもないのだ。
 梓は気恥ずかしさを隠すように二人に背を向けた。
「ほら、そろそろ息ももどってるしさ。とりあえず一番上まで行っちゃおうよ」
「話のそらし方が露骨ねぇ」
「う゛・・・」
 ニヤニヤと、いやぁ〜な笑みを浮かべて追撃してくる綾香・・・。
 しかし、そこで颯爽と救援部隊が現れてくれた。
「まぁ梓さんの言うことにも一理あります。ここに居ても仕方在りませんし」
「むぅ・・・確かに・・・」
「それに・・・」
「それに?」
「その話なら、歩きながらでも出来ます」
 ・・・救援部隊は、実は敵の伏兵だったようだ・・・。
 結局、山の中腹にある神社までの道中、三人の少女達は『柏木耕一と柏木梓が何処まで進んでいるのか。また、よりいっそうの進展を目指すにはどうすればいいのか』という議題で盛り上がった・・・。






 

 一方そのころ、男三人は・・・

「・・・で、結局部屋のコンポの中から出てきましたよ。いやぁ、小さくって探しづらかったですよ、盗聴器って。まったく!なんで女って奴はあんな疑い深くて嫉妬深くて執念深いんでしょうねぇ!」
「そうそう。ちょっと夜に外へ出ただけで、浮気してきたんでしょう!だの、危ないコトしてるんじゃないでしょうね?だの・・・こちとら吸血鬼をばっさばっさと殺しまくってて、そんな暇ないっての!」
「がはは。気をつけろよ〜。俺なんか、浮気がばれたら「耕一さん、あなたを殺します」だぜぇ〜。あの時は、ホントに死ぬかと思ったなぁ〜」
「「・・・マジで浮気したんですかい・・・」」
 
 なんだか、楽しそうだった。







 中書き

 この三人って、全員「A」から始まるんですよねぇ〜・・・名前が。
 
 と、言うわけで、中書きです。
 本当はいっぺんに全部出そうと思ったのですが、長くなってしまったし、更新も滞りがちだったので・・・
 三つに割って一週間ごとに出していきたいと思います。
 
 ・・・どうでもいいけど、季節感違いすぎ?(汗


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